シェルモールド法の特徴とは?主な利点と注意点を解説

シェルモールド法の定義と特徴・主な利点と注意点を徹底解説

シェルモールド法は、現代の製造業において重要な役割を果たしています。こちらでは、シェルモールド法の定義や特徴、主な利点と注意点について、鋳造用シェル中子の製造を行う岐鋳が詳しく解説していきます。

シェルモールド法の特徴・歴史

シェルモールド法の特徴・歴史

シェルモールド法の定義と特徴

シェルモールド法は精密鋳造法の一つで、鋳型が貝殻(シェル)状になることからシェルモールドと呼ばれています。この方法は、ドイツの発明者ヨハネス・クローニング博士によって開発されました。

熱硬化性樹脂(主にフェノール樹脂)でコーティングした珪砂を使用し、約250~350℃に加熱した金型に、この特殊な砂を吹き付けて硬化させます。これにより、薄い殻状の鋳型が形成されます。このプロセスにより、以下のような特徴を持つ鋳型が得られます。

  • 高い寸法精度
  • 優れた表面仕上がり
  • 高い強度
  • ガス抜けの良さ

シェルモールド法は、自動車部品や産業機械部品など、精密で複雑な形状の鋳物製作に適しています。

シェルモールド法の歴史と発展

シェルモールド法は、1944年にドイツのヨハネス・クローニング博士によって発明された鋳型造型法です。この技術は発明者の名にちなんで「クローニング法」や「C法」とも呼ばれています。

シェルモールド法が登場する以前は、粘土を使用した乾燥型・焼型・乾性油を用いた油砂型などの方法が主流でした。しかし、これらの方法では生産性や鋳物の精度に課題がありました。

シェルモールド法の登場により、高精度な鋳造品の製造が可能になったのです。当初は、硅砂などの骨材にフェノール樹脂と硬化剤の粉末を混合したパウダーレジンサンドが使用されていました。しかし、この方法には以下のような問題点が挙げられます。

  • 樹脂の粉塵が飛散する
  • 金型の汚れが激しい
  • バインダーの使用量が多い

これらの課題を解決したのが、1952年にアメリカで発表されたRCS(レジンコーテッドサンド)法です。RCS法では、フェノール樹脂とヘキサミンが骨材表面に均一に被覆されており、以下の特徴を持っています。

  • 粉塵が発生しない
  • 流動性に優れている
  • 貯蔵安定性が高い

日本では1953年に東洋工業株式会社(現マツダ株式会社)がRCS法を技術導入し、自動車産業の発展に大きく貢献しました。

【特徴】シェルモールド法の主な利点

【特徴】シェルモールド法の主な利点

シェルモールド法は、他の鋳造技術と比較して多くの優れた特徴を持つ方法です。こちらでは、その主要なメリットについて詳しく解説します。

高品質な鋳物製作と効率的な生産

シェルモールド法で使用されるRCS(レジンコーテッドサンド)は乾燥状態で提供され、適切に保管すれば無期限に使用可能です。この特性により、中小規模の鋳物工場でもRCS製造設備を持たずに高品質な鋳物製作が可能となります。

RCSの優れた流動性により、複雑な形状の金型にも均一に充填できます。これにより、高い砂充填密度と滑らかな鋳肌が実現し、精密な鋳物製作が可能となります。また、粘結剤が型に付着しにくいため、型の清掃頻度を減らすことができ、生産効率の向上にもつながります。

高強度鋳型による生産性向上とコスト削減

シェルモールド法で作られた鋳型は強度が高く、長距離輸送にも耐えられます。また、工場内での取り扱いも容易で、破損リスクが低減され、セッティング時間の短縮にもつながります。

また、高い熱間強度により、中空中子の肉厚を薄くすることが可能です。これは材料コストの削減につながるだけでなく、中子砂の生型砂への混入量を減らし、生型砂の品質維持にも貢献します。

鋳型の強度劣化リスクが低い

適切に保存されたシェルモールド法の鋳型は、湿度などによる強度劣化がほとんどありません。これにより、鋳型の廃棄量を大幅に減らすことができ、材料の有効利用とコスト削減につながります。

中空中子の造型が容易

シェルモールド法特有の反転排砂方式により、中空中子の造型が容易になります。これにより、製品設計の自由度が大幅に向上します。また、中空中子は鋳造後の崩壊性に優れているため、型バラシ工程の効率化にも貢献します。

環境負荷の軽減と資源の有効活用

シェルモールド法ではシェル中子の中空化が容易なことに加え、熱による崩壊量がコールドボックス中子に比べて少ないため、生型砂への混入量が抑えられます。さらに、RCS自体も生砂型の品質に及ぼす影響が小さいという特徴があります。

再生した生型余剰砂は、流動焙焼法と骨材のスクラビング処理により、RCS用骨材として容易に再利用できます。これにより、資源の有効活用と廃棄物の削減が可能となり、環境負荷の軽減に大きく貢献します。

以上のメリットにより、シェルモールド法は多くの産業分野で採用され、高品質な鋳物製品の効率的かつ環境に配慮した生産に貢献しています。今後も技術の進歩により、さらなる改善や新たな応用が期待されます。

【特徴】シェルモールド法の注意点と対策

シェルモールド法は、高精度な鋳物製作を可能にする革新的な技術ですが、いくつかの注意点も存在します。これらの点を理解し、適切な対策を講じることで、より効果的にこの技術を活用できます。

金型加熱に関する課題

シェルモールド法の最大の特徴である熱硬化性樹脂の使用は、同時にいくつかの課題をもたらします。金型を約250℃~350℃に加熱する必要があるため、以下のような問題が生じます。

まず、高温加熱により木型や樹脂型といった安価な材料が使用できません。これは初期投資コストの増加につながります。また、加熱に必要なエネルギーコストも無視できません。高温での操作は金型の変形リスクを高めます。さらに、加熱と冷却のサイクルに伴う鋳型の変形は、寸法精度の問題を引き起こす可能性があります。

金型の均一加熱も技術的な課題の一つです。不均一な加熱は鋳型品質のばらつきを生み出し、製品の一貫性を損なうおそれがあります。また、造型直後の鋳型が高温であることも、作業効率に影響を与えます。高温環境下での継続的な作業により、機械設備や金型の耐用年数が短くなる傾向があります。

造形速度と特有の問題

シェルモールド法は、コールドボックス法と比較してやや造形速度が遅いという欠点があります。これは生産性に影響を与える可能性があります。

また、反転排砂方式による中空中子造形時には、「ピールバック」という問題が発生することがあります。これは製品品質に直接影響を与える重要な課題です。

注湯温度が低い軽合金鋳物においては、鋳型の崩壊性が不十分になる場合があります。ただし、中空中子を使用する場合は、他の造形法と比較して優れた崩壊性を示します。

環境と作業安全性の問題

シェルモールド法ではフェノール樹脂を使用するため、造型時や注湯時に熱分解によるガスが発生します。これは作業環境を悪化させるだけでなく、鋳造品にガス欠陥を引き起こす可能性もあります。

これらの欠点に対しては、以下のような対策が講じられています。

  • 臭気対策:造型機を囲い、発生する臭気を集中脱臭する方法や、低臭気樹脂の使用が効果的です。
  • 鋳型の「ばり」対策:ばり取りロボットの導入により、効率的に処理できます。自動造型機では、このようなロボットが付属している場合もあります。
  • 金型の熱分布改善:銅合金金型を使用することで、より均一な熱分布を実現し、鋳型品質の向上につながります。

これらの対策を適切に実施することでシェルモールド法の欠点を抑え、その優れた特性を最大限に活用することが可能となります。技術の進歩とともに、さらなる改善策が開発されることが期待されており、シェルモールド法の適用範囲はさらに拡大していくと考えられます。

岐阜県山県市にある岐鋳は、水栓金具の鋳造に使用される鋳造用シェル中子の製造を行っております。小ロット生産や短納期など、お客様の様々なご要望にお応えしますので、お気軽にお問い合わせください。

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会社名 岐鋳
住所 〒501-2115 岐阜県山県市梅原965
営業時間 9:00 – 17:00
定休日 土曜・日曜・祝日
TEL 0581-27-0092
FAX 0581-27-0093
事業内容 鋳造用シェル中子製造
URL https://official-gichu.com/
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